抄録
症例は62歳,女性.主訴は肛門痛,排便障害である.直腸診では前壁中心に表面平滑な粘膜下より圧排性に増殖する巨大な腫瘤を触知した。MRIで最大径12cmの辺縁平滑な腫瘍を認め,内視鏡では一部潰瘍を伴う粘膜下腫瘍の形態を呈した.同部からの生検で高リスクの直腸GISTと診断された.この時点で外科的切除を考えたが腫瘍は小骨盤腔を占拠し,被膜損傷に伴う腫瘍細胞の播種が懸念され,またc-kit遺伝子検索によりexon 11の変異がみつかっておりイマチニブの効果も期待できたことから術前イマチニ投与を行った.投与後約6カ月で最大約40%の縮小効果を認めたため手術を行うこととした.手術は膣後壁を合併切除し被膜損傷することなく腹会陰式直腸切断術を行えた.切除標本の病理診断は広範囲に硝子化変性を伴うGISTであり,イマチニブの著効が示唆された.イマチニブによる術後補助療法を継続的に行い,現在術後14カ月経過しているが再発は認めていない.