2010 年 71 巻 8 号 p. 1980-1984
腸骨動脈瘤に合併した腹腔動脈瘤と上腸間膜動脈瘤の症例を経験したので報告する.症例は51歳男性,検診のエコーで肝血管腫を指摘され,精査CTで最大径6cmの総腸骨動脈瘤と2.1cm大の腹腔動脈瘤と2cmから1.8cm大の3個の上腸間膜動脈瘤を認め紹介となった.手術は下腸間膜動脈分岐部より末梢の腹部大動脈からY型人工血管置換と,腹腔動脈瘤切除術,上腸間膜動脈瘤切除術,大伏在静脈を使用し,固有肝動脈へ1本と上腸間膜動脈の動脈瘤の末梢および動脈瘤から起始する中結腸動脈と2本の大きな空腸動脈への血行再建術を施行した.術後経過はS状結腸の虚血性腸炎による血便が数日認められたが,次第に軽快,術後30日目に退院となった.本症例のように多発腹部内臓動脈瘤の血行再建手術は稀であり,文献的考察を加えて報告する.