2011 年 72 巻 12 号 p. 3098-3102
症例は80歳,女性.食欲低下,腹部膨満,嘔吐を主訴に近医を受診し,イレウスの診断で当院に紹介された.来院時38.7℃の発熱,腹部膨満,下腹部の圧痛と腹膜刺激症状を認めた.炎症反応は高値であり,腹部造影CT検査およびMRI検査で,骨盤腔内に卵巣奇形腫を疑う腫瘍を認めた.腫瘍の内部にはガス像があり,S状結腸との交通が示唆された.保存的加療を行いながら全身精査した後,手術を施行した.左卵巣腫瘍はS状結腸に穿通し,強固に癒着していたため,左卵巣とS状結腸を一塊にして切除した.病理組織学的に腫瘍は卵巣皮様嚢腫より悪性転化をきたした扁平上皮癌と診断された.術後15カ月の現在,再発はみられていない.悪性転化を伴う卵巣皮様嚢腫に関する文献的考察を加えて報告する.