日本臨床外科学会雑誌
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症例
急性上腸間膜静脈血栓症を発症した先天性アンチトロンビンIII欠乏症の1例
杉原 正大松川 啓義藤原 康宏塩崎 滋弘大野 聡二宮 基樹
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2011 年 72 巻 2 号 p. 494-499

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抄録

33歳,男性.小学生時より先天性アンチトロンビンIII(以下,AT-III)欠乏症を指摘されている.2009年1月に肺動脈塞栓症,両下肢静脈血栓症にて他院で入院加療後,ワーファリンを投与されるも同年8月に自己判断で中止していた.同年11月腹痛にて受診,腹膜刺激徴候を認め,CTにて上腸間膜静脈,門脈,脾静脈に血栓,および回腸に虚血の所見を認め,血中AT-III活性が46%と低値であり,先天性AT-III欠乏症に合併した上腸間膜静脈血栓症による小腸壊死と診断し緊急手術を施行した.壊死腸管含め回腸を120cm切除し回腸人工肛門を造設し抗凝固療法にて軽快した.術後3カ月に人工肛門閉鎖術施行し,ワーファリン継続にて静脈血栓症の再燃は認めていない.先天性AT-III欠乏症の上腸間膜静脈血栓症合併には,迅速な外科治療の適応判断,周術期の適切な抗凝固療法や再発予防などが重要である.

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© 2011 日本臨床外科学会
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