2011 年 72 巻 2 号 p. 510-515
症例は51歳,女性.左鼠径部の膨隆に気付き近医を受診し,精査・加療目的に当院紹介となった.左鼠径部に直径約4cm,弾性軟,可動性良好な腫瘤を認めた.腹部CTでは,内部不均一,境界明瞭な等吸収域を認めた.CTでは確定診断に至らなかったため手術の方針とした.手術所見では,子宮円索に連続する血腫様の構造物を認めた.切除標本は表面平滑で,灰白色を呈する充実性腫瘤であった.免疫組織化学的検査でHMB-45(+),actin(+)でありperivascular epithelioid cell tumorと診断された.
本症例は,腫瘍サイズが5cm以下,浸潤性増殖は認めず,核異型と細胞密度の増加は中等度,核分裂像は4/50HPF,壊死は認めず,血管浸潤も認めなかったため,悪性度は低いと考えられた.術後経過は良好で術後第2病日に軽快退院となった.現在術後10カ月が経過したが,再発は認めていない.