抄録
症例は59歳,男性.以前より右鼠径ヘルニアを指摘されており,たびたび右鼠径部が膨隆していたが,その都度自己整復していた.平成20年10月下旬右鼠径部に膨隆が出現したため自分で徒手整復した.その後腹痛が出現し,徐々に増強したため翌日近医を受診し,イレウスと診断され当院紹介受診となった.
受診時,右鼠径部に膨隆は見られず,下腹部に圧痛・自発痛を認めたが腹膜刺激症状は見られなかった.腹部X線写真では拡張した小腸を認め,腹部CTでは右下腹部に拡張した腸管を認めたが,右鼠径部腹壁外への脱出臓器は見られなかった.保存的治療を試みたが,翌日の腹部X線写真でイレウス像の増悪が見られたため,内ヘルニア,索状物による絞扼などを疑い緊急開腹術を行った.腹腔内を検索したところ,右鼠径部で腹腔側へ陥入したヘルニア嚢に小腸が嵌頓していた.本症例は偽還納と呼ばれる稀な嵌頓形態である.