日本臨床外科学会雑誌
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症例
降下性壊死性縦隔炎に対し胸腔鏡下縦隔ドレナージ術を施行した1例
上村 卓嗣中野 徹星田 徹里見 進
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2011 年 72 巻 3 号 p. 619-623

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抄録

症例は53歳,男性.基礎疾患に2型糖尿病を持つ.咽頭炎から頸部膿瘍を併発し,前医で頸部ドレナージを施行されたが,降下性壊死性縦隔炎(descending necrotizing mediastinitis,以下DNM)を発症したため当科へ搬送された.受診時のCT検査で気管分岐部尾側の後縦隔まで進展する膿瘍を認め,同日,胸腔鏡下縦隔ドレナージ術を施行した.術後DNMは改善し,嚥下リハビリを経て68病日に退院した.DNMは,口腔咽頭領域の感染が縦隔へ波及することで発症し,急激に重症化するため診断の遅れは致命的となる.重症の口腔咽頭領域感染症例ではDNMを念頭に置き,診療する必要がある.治療は外科的ドレナージが必須であるが,最近は低侵襲の鏡視下縦隔ドレナージの報告も多く,従来の開胸術に代わる新たな選択肢となる.

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© 2011 日本臨床外科学会
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