抄録
症例は64歳,女性.突然の下腹部痛を主訴に当院へ救急搬送された.来院時,左下腹部に限局した腹膜刺激症状を認めた.画像検査にて痛みの部位に一致して9cm大の腫瘤像を,左横隔膜下には腹水の貯留を認めた.腹水を穿刺したところ血性であり腹腔内出血と診断した.来院直後より血圧の低下を認め,S状結腸間膜内の動脈破綻による出血性ショックと考え同日緊急手術を施行した.S状結腸間膜内に巨大な血腫を認め,これを除去したところS状結腸間膜内の動脈より拍動性の出血が認められた.同部の腸間膜を含めてS状結腸切除術を施行した.病理組織学的検査の結果,嚢胞性中膜壊死と診断された.術後経過は良好で術後13日目に退院,約1年経過した現在も再発を認めていない.
嚢胞性中膜壊死は通常大血管に見られ,腹腔内の中小動脈に発生することはまれである.今回われわれは嚢胞性中膜壊死がS状結腸動脈に生じ腹腔内出血をきたした1例を経験したので報告する.