日本臨床外科学会雑誌
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症例
右胃大網動脈グラフトによる冠動脈バイパス術後に膵頭十二指腸切除術を施行した1例
高見 一弘阿部 友哉三関 哲矢奥 隆臣井伊 貴幸富永 剛
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2011 年 72 巻 7 号 p. 1843-1847

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抄録

今回,右胃大網動脈グラフトを用いた冠動脈バイパス術後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行しえた症例を経験したので報告する.症例は80歳の男性で55歳と78歳時に心筋梗塞に対し冠動脈バイパス手術を施行されていた.今回は発熱と黄疸から閉塞性黄疸が疑われ精査にて下部胆管癌の診断となった.術前病期や年齢を考慮して胃十二指腸動脈温存による亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中所見では幽門部大彎側の血管処理がなされ,胃十二指腸動脈の末梢である右胃大網動脈グラフトは拍動良好で,肝外側区域の腹側を頭側に向かって走行し縦隔内に至るのが確認された.手術は胃切離を先行して行い直視下に広く露出された膵頭部前面から胃十二指腸動脈─右胃大網動脈グラフトを末梢から胃十二指腸動脈根部に向かって膵十二指腸動脈分枝の処理を行うことで手術を比較的容易に遂行できた.術後は特に合併症を認めず経過良好であった.

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