2011 年 72 巻 7 号 p. 1899-1903
症例は81歳,男性.腰背部の違和感を自覚し,徐々に増強し腹痛も呈したため,当院に救急搬送された.受診時の単純CTにて骨盤内小腸の拡張と閉鎖孔ヘルニアを認め,閉鎖孔ヘルニア嵌頓による小腸イレウスと診断した.CT後症状が消失したため,造影CTを行ったところ閉鎖孔ヘルニアは消失し,小腸の拡張も改善し自然還納したものと考えられた.小腸壁の造影効果も十分で,壊死を疑う所見もなく,待機的に発症30日後手術を行った.手術は鼠径法にてDirect Kugel Patch®を使用しヘルニア修復術を施行し,術後第3病日に退院となった.術後1年現在再発なく経過している.
男性に発症し,自然還納したというまれな経過をたどった閉鎖孔ヘルニアの1例を経験した.待機的なDirect Kugel Patch®を用いた修復術が有用であったため,文献的考察を加え報告する.