日本臨床外科学会雑誌
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症例
横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例
近藤 優宮本 康二内村 正史大久保 雄一郎多羅尾 信
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2012 年 73 巻 1 号 p. 155-159

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抄録

症例は86歳,女性.開腹手術歴無し.吐気・腹痛が出現したため近医受診し腹部単純レントゲン写真でイレウスと診断,精査加療目的で当院紹介となった.腹部単純CTでは腹水を伴った小腸拡張を認めたが明らかな閉塞機転は指摘できず,腹部膨隆はあるが軟らかく反跳痛は認めなかったため消化器内科へ入院,イレウス管を挿入し間欠持続吸引にて保存的治療を試みた.しかし入院後イレウス管による改善は乏しく,第3病日にCTを施行したが小腸拡張像は変化無く腹水が増加し保存的治療での改善は難しいと考え緊急手術を行った.開腹所見ではTreitz靱帯右側の横行結腸間膜に約3cmの裂孔を認め,ここから網嚢内へTreitz靱帯から約80cmの空腸が約40cm嵌入していた.小腸の腸管壊死は認めなかったため,整復後は裂孔部を縫合閉鎖し手術終了した.術後経過は良好だった.術後CTを見直すとヘルニア門は確認できたため,CTにて術前診断し得る症例と考えられた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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