日本臨床外科学会雑誌
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症例
女性化乳房切除後に発症したMondor病の1例
柏木 伸一郎石川 哲郎川尻 成美高島 勉小野田 尚佳平川 弘聖
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2012 年 73 巻 10 号 p. 2494-2497

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抄録

Mondor病は乳房およびその周囲の前胸壁に多く認められ,有痛性の索状物や皮膚陥凹を伴う表在性の血栓性静脈炎である.外科的手術,打撲,感染などを契機に発症する比較的まれな良性疾患であるが,本邦では男性の報告例はほとんど存在せず極めてまれであると思われた.症例は74歳,男性.左女性化乳房を自覚していたが放置していた.増大・疼痛にて当院受診し,増大傾向,疼痛増強,本人の希望から保存的加療困難とし,局所麻酔下に左女性化乳房切除を行った.術後1週間,左前胸腹部にかけての疼痛および索状物が突然に認められた.超音波検査では,硬結部皮下直下に低エコーを示す約2.2mm幅の管腔構造が確認された.女性化乳房の切除を契機に発症したMondor病と診断し経過観察を行ったが,約1カ月で索状物は自然に消退し軽快した.今回われわれは,本邦では極めてまれな男性Mondor病の1例を経験したので報告する.

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© 2012 日本臨床外科学会
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