日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
大動脈と下大静脈を合併切除しグラフト再建した後腹膜脂肪肉腫の1例
栃木 透丸山 尚嗣成島 一夫小林 豊田中 元茂木 健司
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 73 巻 10 号 p. 2686-2690

詳細
抄録

症例は62歳,男性.献血時に貧血を指摘され,精査CTで巨大な後腹膜腫瘤を認めたため当院紹介となった.造影CTでは右腹部を中心に不均一に造影される巨大な腫瘍を認めた.腸腰筋との境界は不明瞭で,大動脈と左右総腸骨動脈を取り囲み,下大静脈は腹側に,右腎も頭側へ圧排され水腎症をきたしていた.後腹膜悪性腫瘍と診断し手術に臨んだ.大動脈への浸潤を認めたため,一時的に大動脈と左右外腸骨動脈をY-graftでバイパスし,右腎,右尿管,下大静脈,腹部大動脈,腸腰筋とen blocに腫瘍を切除した.切除後あらためてYグラフトを左右総腸骨動脈に吻合し大動脈を置換した.左総腸骨静脈は血栓で閉塞していたため下大静脈と右総腸骨静脈をIグラフトで置換した.病理にて脱分化型脂肪肉腫と診断された.大きな合併症なく術後20日で退院した.術後13カ月に後腹膜再発を切除したが,術後20カ月を経過し新たな再発なく経過観察中である.

著者関連情報
© 2012 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top