日本臨床外科学会雑誌
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症例
人工心肺を使用し救命した食道癌術後気管支膜様部壊死の1例
手島 仁三田村 篤中村 崇宣佐藤 千晃岡本 宏史亀井 尚
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2012 年 73 巻 12 号 p. 3102-3107

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抄録

今回われわれは食道癌術後気管支膜様部壊死の救済手術に対して人工心肺を併用し救命しえた1例を経験したので報告する.症例は63歳男性.前医にて胸部食道癌に対して右開胸胸部食道切除,後縦隔経路胃管再建が行われた.第5病日から呼吸状態が悪化,第7病日に縫合不全,縦隔膿瘍,気管支膜様部壊死と診断され当院に搬送された.P/F 比 82の重症呼吸不全の状態で経皮的心肺補助装置(PCPS)を使用し手術を行い,右気管支膜様部の壊死部分に大網弁を被覆し食道胃管吻合は離断して頸部食道瘻を造設した.術後もPCPSを継続使用,第3病日に膜型人工肺(ECMO)に変更し第7病日まで使用した.気管支膜様部壊死部の肉芽化に伴い呼吸状態は安定し第77病日に人工呼吸器から離脱した.食道癌術後気管・気管支壊死は呼吸不全だけでなく縦隔炎などを併発し致命的となることが多いが,人工心肺の使用はその救済に有用な方法であると思われた.

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