抄録
症例は87歳女性で食欲不振,全身倦怠感を主訴に近医を受診し胃癌を強く疑われた.胸部X線写真で心陰影に一致して胃泡が確認され,上部消化管透視検査で噴門から幽門まで胃全体が後縦隔に逸脱しupside down stomachを呈していた.上部消化管内視鏡検査では胃角から前庭部にかけて潰瘍性病変が認められ,生検で低分化型腺癌が検出された.Upside down stomachに併発した進行胃癌の診断で開腹幽門側胃切除+食道裂孔ヘルニア嚢切除術を行った.再建はRoux-en-Y法で行われ,残胃を横隔膜脚に縫合固定して胃の胸腔内への再嵌頓を予防した.最終病理組織診断はpT4apN3aM0,INFb,ly3,v2,Stage IIICだった.術後経過は良好で,逆流症状は認められていない.Upside down stomachを伴う胃癌に対しては症例ごとに再建方法や逆流防止手技の適応を検討する必要があると考えられた.