2012 年 73 巻 12 号 p. 3167-3171
76歳の男性のRS-S大腸癌に対し,diverting ileostomyを伴う低位前方切除術を施行した.術後8日目に著しいストーマ狭窄でイレウス状態となり,19日目に再手術を施行したが,摘出標本で漿膜下層および腸間膜に骨形成を認め,Heterotopic Mesenteric Ossification(以下,HMOと略記)が疑われた.HMOは腹部臓器に骨組織を形成し狭窄や腫瘤を生じる極めてまれな疾患で,過去に本邦の2例を含む46例(27編)が報告されている.ほぼ全例で手術が施行されているが,手術の難渋による死亡例や再発によるpolysurgery例も散見される.異所性骨化の予防に放射線照射,diphosphonates,NSAIDsなどが有効とする論文や,cimetidineをはじめとするH2-blockerが石灰化病変を消失させた報告があり,本症における有効性の評価が望まれる.