2012 年 73 巻 2 号 p. 466-470
症例は,70歳,女性.平成7年1月に右腎摘出術を施行され,腎細胞癌と診断された.平成22年4月に腹部CT上肝S8に約4cm大の腫瘤を指摘され,当院内科にて肝生検施行された.その結果,肝カルチノイドと診断され,同年7月当科にて肝S8部分切除施行した.摘出腫瘍は,約4×3cmの皮膜を有する境界明瞭な結節性病変で,肝被膜への浸潤もなく,ごく一部でわずかな血管侵襲を認めるのみであった.転移性肝カルチノイドを疑い,原発巣検索のため,平成7年の摘出腎の再検討を行った結果,腎カルチノイドであったことが判明した.腎カルチノイドは非常に稀で1),その異時性肝転移の切除報告は,われわれの調べ得る限りでは無かった.また,カルチノイド腫瘍は,経過観察期間を過ぎて再発・転移をきたす可能性もあると考えられた.