2012 年 73 巻 3 号 p. 643-647
症例は50歳,女性.診断は下行結腸癌同時性肝転移でS2に3.6cm,S5に6.5cmの切除可能と考えられる同時性肝転移を認め,まず原発巣を切除した.その後mFOLFOX6+ベバシズマブによるネオアジュバント化学療法を8コース施行した.術前CTによる奏効率はRECISTversion1.0でPRであり,外側区域切除術,肝部分切除術(S45)を施行した.S5の肝転移は病理学的に壊死組織を呈し,癌の遺残は認めず,大腸癌取扱い規約に基づく組織学的効果判定基準Grade3で,長径6.5cmの腫瘍がネオアジュバント化学療法8コース後に病理学的CRとなった.
長径6.5cmでの腫瘍で著効が得られたことから,分子標的治療薬を含むネオアジュバント化学療法で根治率の向上が期待でき,大腸癌肝転移症例に対する切除適応拡大の可能性を示した貴重な症例と考えられた.