2012 年 73 巻 5 号 p. 1269-1273
症例1:43歳女性は1年前に無症状の上行結腸間膜嚢腫と診断されていた.突然の右下腹部痛と発熱が出現しCTで12×9cm大の腸間膜嚢腫への感染が疑われ経皮的嚢胞ドレナージと抗生剤投与ののち,嚢胞切除とともに回盲部切除術を施行した.病理組織結果では炎症を合併した嚢状の腸間膜リンパ管腫であった.症例2:30歳男性は突然の腹痛と発熱を認めた.CTで13×11cm大の小腸間膜内の多房性嚢胞性腫瘤を認め,抗生剤加療ののち待機的に腫瘤とともに約50cmの空腸合併切除を施行した.病理組織結果では嚢胞内部に混濁した血性壊死物が充満した海綿状の腸間膜リンパ管腫であった.結語:成人の腸間膜リンパ管腫は比較的まれな疾患で大半が無症状で経過するが,時に嚢胞内感染などによる急性腹症で発見される.今回嚢胞内に感染が疑われ待機的手術を行った2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.