日本臨床外科学会雑誌
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症例
S状結腸癌傍大動脈リンパ節転移を疑ったIgG4関連後腹膜線維症の1例
佐藤 泰輔戸塚 統戸谷 裕之吉成 大介須納瀬 豊竹吉 泉
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2012 年 73 巻 5 号 p. 1293-1297

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抄録

症例は74歳,男性.平成21年8月,右下腹部痛が出現したため近医を受診した.腹部CTでS状結腸の肥厚と口側腸管の拡張,大動脈と下腸間膜動脈周囲軟部組織の肥厚および左水腎症を認めた.9月に当科に紹介された.精査の結果,S状結腸癌とリンパ節転移または後腹膜線維症による左尿管狭窄と診断した.S状結腸切除D2郭清術を行った.術中所見で,腹部大動脈から下腸間膜動脈周囲に非常に硬い結合織を認め,下腸間膜動脈周囲組織の剥離に難渋した.病理診断は,S,Type3,SS,N0,Stage II.下腸間膜動脈周囲の結合織はIgG4関連線維症に矛盾しない所見であった.術後の経過は良好で15病日に退院.泌尿器科で左尿管狭窄に対してダブルJステントを挿入後,線維症の治療としてプレドニンの内服を開始した.水腎症は消失し,ダブルJステントは抜去され,画像上線維症は縮小した.

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© 2012 日本臨床外科学会
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