2012 年 73 巻 6 号 p. 1422-1425
症例は57歳の女性で虫垂切除の既往があった.腹痛を主訴に近医を受診した.腹部単純X線検査で腸閉塞と診断されて当科入院となった.腹部膨満を認めたが筋性防御や反跳痛は認めず腫瘤も触知しなかった.腹部CT検査で左骨盤内に小腸の層状構造を疑わせる所見を認めた.癒着性腸閉塞またはCT所見から小腸の腸重積と診断した.症状が軽度なことからまず保存的治療を開始したが改善せず,2日後に下血も出現したため手術を施行した.術前に大腸病変の鑑別のため注腸検査,大腸内視鏡検査を施行したが異常を認めなかった.開腹時,腸閉塞は既に解除されていたが,回腸に炎症性変化の強い部分を認めた.回腸・回腸型の腸重積が術前の注腸,内視鏡検査によって整復されたものと診断し回腸部分切除術を施行した.切除腸管に腫瘍などの器質的病変は認めず特発性腸重積と診断した.