2012 年 73 巻 7 号 p. 1668-1673
症例は69歳,女性.全身倦怠感,食欲不振に加え,2日前から発熱,咳が出現したため当院を受診.血液検査で高度の炎症反応を認めたため入院し,抗生剤を投与されたが炎症反応の改善はなく,体動時に腹痛を訴えるため当科を紹介された.触診上,上腹部正中に腫瘤を触知し,同部に圧痛を認めた.US,CTにて上腹部の胃壁に接して10×8cmの腹腔内膿瘍と膿瘍内に2.5cmの高吸収線状陰影を認めた.上部消化管内視鏡検査では胃内に大量の食物残渣を認めたが,異物,潰瘍,穿孔部ははっきりしなかった.開腹手術を行ったところ,胃と横行結腸に挟まれて大網に覆われた膿瘍を認めた.膿瘍は横行結腸とは剥離できたが胃壁と連続しており,胃前庭部大弯を一部合併切除し膿瘍を摘出した.摘出標本は11×10×6cmで標本内に魚骨および広範な膿瘍と膿汁を認めた.今回われわれは魚骨誤嚥により胃穿孔をきたし,腹腔内膿瘍を形成した症例を経験したので報告する.