2012 年 73 巻 8 号 p. 1954-1959
症例は70歳,男性.貧血のため当院を紹介受診した.上部消化管内視鏡検査で胃幽門前庭部大弯前壁寄りに2型腫瘍を認め,生検で高分化管状腺癌ないし乳頭腺癌の診断を得た.腹部CTで他臓器転移を認めなかった.幽門側胃切除術D2リンパ節郭清を行った.病理組織学的検査では胃粘膜から固有筋層にかけて,大型,不整形胞巣を形成して浸潤する内分泌細胞癌を認めた.腺癌と共存し,移行像も見られた.3b番6番リンパ節に計5個の内分泌細胞癌の転移を認め,pT2 (MP) pN2 pM0 pStage IIB(胃癌取扱い規約第14版)と診断した.術後補助化学療法は行わず,再発なく経過していたが,術7年3カ月後に誤嚥性肺炎で死亡した.胃内分泌細胞癌はまれな疾患で,悪性度が極めて高く,早期より遠隔転移をきたし予後不良とされている.われわれは7年を超える長期生存が得られた1例を経験したので文献的考察を加え報告する.