2012 年 73 巻 8 号 p. 1974-1978
症例は66歳,日本人女性.在住先のインドネシアで十二指腸球部異物を摘出.その後,イレウスを呈したが保存的加療で軽快.しかし,下腹部の鈍痛が改善せず,1カ月後に帰国し当院を受診した.右下腹部に軽度の圧痛を認め,可動性良好な腫瘤を触知した.異物誤飲歴を有しており,症状との関連が示唆されたため,直ちに単純CTを撮影した.右骨盤内の回腸内に約6cmのhigh densityな線状陰影を認め,先端は腸間膜へ達しており,周囲の脂肪織濃度上昇を伴っていた.異物による消化管穿孔・炎症性腫瘤と診断.局在と腫瘤形成状態から内視鏡的摘出は困難と判断し回腸部分切除を行った.腸管内異物は爪楊枝であった.異物による消化管穿孔の診断は,異物誤飲の可能性も念頭に置いて問診・診察しなければ確定診断に至ることは困難である.今回,異物誤飲を想起したことで早期診断しえた爪楊枝による消化管穿孔の1例を経験したので報告する.