日本臨床外科学会雑誌
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症例
大腿法で手術を行い偽還納と同様の病態をきたした大腿ヘルニア嵌頓の1例
久島 昭浩高橋 雅哉高橋 克之蜂須賀 仁志布村 眞季
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2012 年 73 巻 8 号 p. 2137-2142

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抄録

症例は91歳,女性.他院より腸閉塞で紹介され,右大腿ヘルニア嵌頓に対して大腿法で手術を行ったが術後に腸閉塞が持続した.腹部CT検査を施行したが腸閉塞の原因となる有意な所見は認めなかった.イレウス管を留置後も腸閉塞の改善が見られず開腹手術を行った.骨盤壁に小腸が嵌入しているような所見を認め,偽還納と同様な状態であった.偽還納の報告例は少なく,その多くは鼠径ヘルニア嵌頓に対して用手還納を行った際に発生している.自験例では,大腿ヘルニア嵌頓の手術において大腿輪での嵌頓が容易に解除されず,脱出していた小腸を腹腔側へ戻した際に偽還納と同様な状態が発生した.大腿法は局所麻酔で行える低侵襲な術式であるが,嵌頓が容易に解除されない場合は術式の変更も考慮すべきである.

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© 2012 日本臨床外科学会
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