症例は61歳,男性.咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部CTで偶然右上腹部の腫瘤を指摘され当院に紹介された.腹部CTでは右副腎近傍に石灰化を伴う約5cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.腹部MRIでも右副腎頭側にT2で高信号,T1で低信号を呈する腫瘤を認めた.MIBGおよびアドステロールシンチグラフィでは異常集積を認めず,副腎髄質および皮質のホルモン検査でも測定値はほぼ正常範囲内であった.以上より非機能性副腎腫瘍もしくは後腹膜腫瘍との診断で開腹し,右副腎より発生していた腫瘍を切除した.摘出標本の割面は凝血を混じえた暗赤色調を呈し,病理組織学的には高度な出血や石灰化などの変性を伴った副腎皮質腺腫であった.副腎出血はまれであり,その原因は多くが外傷によるとされている.外傷の既往のない皮質腺腫に伴った副腎出血は極めてまれであるので,若干の文献的考察を加えて報告する.