抄録
症例は47歳,女性.圧痛を伴う上腹部の腫瘤を主訴に受診された.約12年前に検診にて指摘され経過観察中であった膵頭部多発嚢胞性病変が増大傾向にあり,膵酵素とトランスアミナーゼの上昇,軽度のビリルビン上昇を認めた.画像所見では膵頭部に隣り合う3個の類円形の嚢胞性病変を認めた.それぞれの嚢胞は隣接して存在するも相互交通はなく,主膵管との交通も否定的であった.また嚢胞内隔壁や壁内結節を認めなかった.嚢胞径はそれぞれ71mm,52mm,42mmで膨張性に発育し,主膵管と総胆管の圧排所見を認め,膵液と胆汁の流出障害が生じていると判断された.腫瘍性病変の可能性も否定できないことから膵頭部十二指腸切除が施行された.切除標本の病理検索では,嚢胞内面は異型の乏しい1層の立方上皮で覆われており,非腫瘍性の真性膵嚢胞と診断された.同疾患は膵嚢胞性腫瘍と鑑別を要する希少な疾患であると思われ報告する.