2013 年 74 巻 1 号 p. 238-242
症例は52歳,男性.腹痛と腹部膨満感が出現し近医を受診.腹部レントゲンで小腸ニボーを認め,イレウスの診断で入院加療を行ったが改善せず,造影CTを施行したところ小腸腫瘍が疑われた.イレウス管挿入で腸閉塞症状は改善したが,イレウス管造影で骨盤内に小腸の狭窄像を認め,小腸腫瘍によるイレウスの診断で手術目的で当院紹介となった.腹腔鏡下に手術施行したところ,腫瘍性病変は認めず,回腸末端から2m程度口側で小腸の一部が膀胱上窩に嵌頓している所見を認めた.手術は嵌頓した小腸を剥離しヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術中所見から,内膀胱上窩ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断した.内膀胱上窩ヘルニアは非常にまれな疾患であり,術前診断は非常に困難である.本症例も術前に正診には至らなかった.原因不明のイレウスで発症した症例では,本症の存在も念頭に置くべきであると考えられた.