抄録
症例は60歳,男性.2011年9月に左鼠径部の腫脹と疼痛を訴え当院に救急搬送.左鼠径部には発赤・疼痛を伴う新生児頭大の膨隆あり.採血検査で高度の炎症所見および腹部CTでS状結腸の左鼠径ヘルニア嵌頓と鼠径部皮下に腸管穿孔を示す画像所見を認め,同日緊急手術を施行.鼠径部を切開すると,皮下に多量の便汁漏出がみられ,鼠径管を構成する筋膜は広範に壊死していた.下腹部正中切開を追加し,穿孔部を含んだS状結腸を部分切除した後,下行結腸S状結腸端側吻合を施行.術中迅速診断によりS状結腸癌穿孔と判明.鼠径管後壁の補強は行わずに創は開放したまま皮下ドレーンを4本留置し手術終了.術後は創感染を併発したが,術後47病日に退院.外来でホリナート・テガフール・ウラシル療法を継続中である.鼠径ヘルニア嵌頓に伴う大腸穿孔では,大腸癌を伴う可能性を念頭に置き,適切な腸管切除とドレナージを行うことが重要と考えられた.