抄録
症例は46歳,男性.突然の胸痛を主訴に搬送され,急性大動脈解離(St. A型)と診断された.緊急手術を施行したが,術後低心拍出量症候群となり,術後2日目に東洋紡型補助人工心臓装着に至った.術後10日目より胸腔ドレーンから連日1,000ml以上の排液を認めた.保存的治療を行ったが,排液量が増加したため,術後26日目に胸腔鏡下胸管結紮術を施行した.胸水排液量は著明に減少したものの,完全には治癒せず,定期的な胸腔穿刺を必要とした.術後67日目よりソマトスタチンアナログ製剤(オクトレオチド)100μg×2回/日の皮下注射を行ったところ,投与4日目より300ml/日以下となり,その後の増加は見られなかった.今回,胸部大動脈術後の乳糜胸にオクトレオチドを使用し,重篤な副作用なく,最終的に治癒せしめたことから,全身状態不良の症例でも試みる価値は十分あると考える.