日本臨床外科学会雑誌
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症例
遅発性十二指腸狭窄を伴った特発性後腹膜血腫の1例
柴田 耕治塩見 正哉世古口 英高木 健司
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2013 年 74 巻 11 号 p. 3215-3219

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抄録

遅発性に十二指腸狭窄をきたした特発性後腹膜血腫の1例を報告する.症例は55歳の女性.突然の腹痛と眩暈を主訴に受診した.腹部CTで後腹膜に不整形領域を認め,後腹膜血腫と診断した.腹部血管造影検査で出血源は特定できなかった.外傷歴はなく,他に原因となりうる基礎疾患がなかったため,特発性後腹膜血腫と診断した.保存的治療により腹痛の改善および血腫の縮小を認めたが,第11病日に嘔吐症状が出現した.上部消化管内視鏡検査を施行したところ,十二指腸下行脚に高度の狭窄所見を認めた.保存的治療を3週間以上にわたり行い,最終的に通過障害は改善した.以後,腸管の狭窄症状は認めなかった.発症4カ月後の腹部CTでは血腫は消失していた.
後腹膜血腫は全身状態に問題がなければ保存的に治療可能であるが,膵頭十二指腸領域に血腫が存在する場合には遅発性十二指腸狭窄の出現に十分注意する必要がある.

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© 2013 日本臨床外科学会
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