2013 年 74 巻 12 号 p. 3430-3434
症例は67歳,男性.6年前に直腸癌にて経肛門的切除術を施行されている.以後再発の所見は認めていなかったが,今回,肛門周囲の掻痒感と発赤を主訴に近医を受診し,皮膚生検にてPaget細胞を認めて当院に紹介となった.免疫組織化学染色にてPaget細胞は隣接臓器癌のPaget現象を示唆する所見であった.精査にて隣接臓器癌は証明できなかったが,免疫染色の結果と直腸癌の既往があることを踏まえて直腸肛門管原発癌に起因するPaget現象と診断し腹腔鏡下直腸切断術を施行した.しかし,切離標本内に明らかな癌病変を認めず病理学的診断は肛門周囲Paget病であった.肛門周囲Paget病とPaget現象の鑑別には免疫染色と隣接臓器癌の検索が必須であるが,十分な精査を行っても術前の確定診断が困難な場合があることを念頭に置き,加療を行う必要がある.