2013 年 74 巻 12 号 p. 3459-3464
症例は20歳,女性.19歳時より右側腹部痛を繰り返し認めたため近医を受診し,精査にて多隔壁胆嚢が疑われ当院紹介受診となった.血液生化学所見では炎症所見を認めず,肝胆道系酵素や腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)も正常範囲内であった.画像検査にて胆嚢内部のほぼ全域に隔壁像を認め,多隔壁胆嚢と診断した.胆嚢内に結石,結節性病変,胆泥などを疑う所見は認めなかった.有症状であることから切除の適応と判断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢はブドウの房状の形態を示しており,内腔に多数の隔壁を認めた.胆嚢隔壁は高円柱上皮で覆われており,隔壁に胆嚢壁の固有筋層が移行する像を認めた.なお,上皮に炎症性変化や細胞異型を認めなかった.多隔壁胆嚢は非常にまれな先天性疾患であり,本邦報告例とともに文献的報告を加えて報告する.