日本臨床外科学会雑誌
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症例
遺残虫垂より発生し腹腔内膿瘍の様相を呈した粘液嚢胞腺癌の1例
鈴木 崇之柳澤 真司新村 兼康土屋 俊一海保 隆宮崎 勝
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2013 年 74 巻 2 号 p. 436-441

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抄録

症例は80歳,女性.60年前に虫垂切除,その30年後に遺残膿瘍の手術を受けていた.3年前より時々右下腹部痛を認め,最近になり発熱と腹痛の増悪,右下腹部腫瘤を触知するようになったため来院した.腹部CT上,回盲部に接し後腹膜に及ぶ膿瘍を認めたため経皮的にドレーンを挿入し入院となった.大腸内視鏡では腫瘍性病変は認めないものの盲腸粘膜の浮腫,発赤と盲腸憩室を認めた.当初は盲腸憩室後腹膜穿通による膿瘍と診断していたが,腫瘍マーカーの上昇もあり腫瘍性病変の可能性も考え手術を行った.開腹すると膿瘍と考えられていた部分は約10cmの巨大な腫瘤であり,回盲部切除およびドレーン刺入部の瘻孔切除を行った.病理組織学的に腫瘤内には遺残虫垂組織を認め多量の粘液・壊死組織が充満,腫瘤壁には高分化腺癌の浸潤を認めた.以上より遺残虫垂より発生した粘液嚢胞腺癌と考えられた.

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© 2013 日本臨床外科学会
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