日本臨床外科学会雑誌
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症例
小腸穿孔を繰り返したコレステロール塞栓症の1例
正司 裕隆今 裕史小丹枝 裕二三野 和宏片山 知也小池 雅彦
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2013 年 74 巻 3 号 p. 709-713

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抄録

症例は72歳,男性.経皮的冠動脈形成術,冠動脈バイパス術と大動脈弁置換術の治療歴を有し,胃癌に対して腹腔鏡補助下胃全摘術施行後であった.食後より腹痛が出現し,当院を受診.腹膜刺激症状を認め,CTで遊離ガスと腹水を認めたため消化管穿孔と診断し手術を行った.小腸に穿孔を認め,病理組織所見でコレステロール結晶塞栓症(cholesterol crystal embolization:CCE)による小腸穿孔と診断した.術後は良好に経過し,退院するも退院後7日目に再度腹痛が出現し再入院となり消化管穿孔のため再手術を行った.小腸再穿孔を認めたため小腸切除を行ったが,術後再穿孔もしくは縫合不全をきたし再手術後28日目に死亡した.病理所見で前回同様CCEを認めた.CCEは血管内粥腫の破綻,飛散により多臓器障害をきたす予後不良な疾患であり,急性腹症の診療の際は本症の可能性も考慮する必要があると考えられた.

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© 2013 日本臨床外科学会
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