2013 年 74 巻 3 号 p. 824-828
症例は58歳,女性.半年前より当院婦人科にて卵巣癌に対し化学療法を行っていた.1週間前より発熱,下腹部痛出現し,経過をみていたが改善せず,外来を受診した.レントゲンにてfree airを認め,消化管穿孔の疑いにて当科紹介となった.CTでは腫瘍内に便塊とガスの貯留を認め,S状結腸との境界が不明瞭となっており,S状結腸卵巣腫瘍内穿通を疑い緊急手術を施行した.腹腔内への便汁の流出は認めなかったが,腫瘍内に便汁の貯留を認め,右側卵巣癌とS状結腸が瘻孔を形成しており,両側卵巣腫瘍摘出,S状結腸切除,人工肛門造設術を施行した.病理組織学的検査では異型核を有する多角形細胞から成る胞巣,角化像を認め,卵巣扁平上皮癌と診断した.瘻孔部にはviableな腫瘍細胞は認めなかった.卵巣癌にて化学療法施行中に消化管と瘻孔形成を伴うことは非常に稀であるが,重篤な炎症所見を伴うこともあり,早急に診断し,治療を行う必要がある.