2013 年 74 巻 4 号 p. 1019-1023
症例は50歳,男性.48歳時に胃癌にて幽門側胃切除術を施行された.S-1内服による術後補助化学療法を施行中の定期検査にて胆嚢に隆起性病変指摘された.胆嚢癌疑われ精査加療目的に当科紹介となった.全身検索で胆嚢以外の病変は認めず,PET検査にて同部位のFDGの著明な取り込みを認めたため,胆嚢癌の術前診断にて胆嚢摘出術,肝床部切除術,肝外胆管切除・胆道再建術施行した.摘出標本では胆嚢底部に腫瘍を認めたが胆嚢粘膜に異常を認めなかった.病理検査で胆嚢腫瘍は中分化型腺癌であり,その主体は粘膜下から深部に存在しており前回手術の胃癌病変と類似性が高かったため胃癌の胆嚢転移と診断した.胃癌の胆嚢転移はまれであり,特に異時性転移症例は極めてまれである.今回われわれは,胃癌に対し幽門側胃切除術後に胆嚢転移をきたし,切除施行できた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.