抄録
症例は80歳,男性.直腸S状部癌の精査目的CT検査,MRI検査にて回腸腸間膜に長径12cmの一部に石灰化を伴い造影効果のある充実性成分を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.小腸腸間膜嚢胞腺癌,重複腸管,変性したGIST等を鑑別診断とし手術を行った.腫瘤は回腸末端から40から50cmの腸間膜に位置し浸潤傾向はなく腸管切除することなく核出術にて完全切除を行えた.摘出した腫瘤は13×6×5cm,256gで病理検査にて充実性腫瘤部に癌細胞を認め他部位の嚢胞壁には正常の円柱上皮,高円柱状異型細胞への移行像を認め嚢胞腺癌と診断された.腸間膜嚢胞に発生する腸間膜嚢胞腺癌は極めてまれな疾患であるが,今回われわれは直腸S状部癌の術前精査にて偶然発見された小腸腸間膜嚢胞腺癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.