日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃癌術後反復性脾摘後重症感染症の1救命例
田村 耕一白井 康嗣野口 浩平東郷 直希永井 祐吾岩橋 誠
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2013 年 74 巻 5 号 p. 1168-1172

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抄録

胃癌術後に繰り返して発症した脾摘後重症感染症(OPSI:overwhelming postsplenectomy infection)の1救命例を報告する.症例は52歳女性.胃噴門部の進行胃癌に対し胃全摘,脾摘術を施行した.術後第6病日に40.1℃の発熱が出現し,播種性血管内凝固(DIC)を認めた.抗生剤と免疫グロブリン製剤などの投与にて一旦症状が改善した.術後第13病日に再度発熱が出現し,翌日DICと肺胞出血を認め,3次救急救命センターへ転院となり改善を得た.その後,外来通院中の術後9カ月目に40.2℃の発熱が出現した.多臓器不全とDICを認めたが,集中治療にて救命しえた.血液培養から有莢膜細菌が検出され,その病態からOPSIと診断した.OPSIは発症後急激な経過をとる致死率の高い病態であるが,本邦での認識や啓蒙は十分ではない.脾摘後はOPSIを念頭に置いた対応が肝要であると考えられた.

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© 2013 日本臨床外科学会
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