日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳癌術後10年で多発骨転移と癌性髄膜炎で再発し急速な転帰を辿った1例
脇坂 和貴田口 和典細田 充主山本 貢武冨 紹信山下 啓子
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キーワード: 乳癌, 晩期再発, 癌性髄膜炎
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2013 年 74 巻 5 号 p. 1208-1211

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抄録

エストロゲンレセプター(ER)陽性乳癌は術後5年以降の再発も稀ではなく,通常,晩期再発例ほど再発後の内分泌療法に奏効して長期生存が期待できる.われわれは,術後10年で多発骨転移,癌性髄膜炎で再発して急速な転帰を辿ったER陽性乳癌の1例を経験した.症例は65歳女性.55歳時に右乳癌(T1N0M0,Stage I)にて右乳房切除術,腋窩リンパ節郭清を施行した.病理診断はpT1 pN0,ER陽性(80-90%),プロゲステロンレセプター陰性,HER2陰性であった.アロマターゼ阻害剤を5年間内服したが,術後10年2カ月時に腰痛を認め,精査により多発骨転移,多発脳転移,癌性髄膜炎と診断された.内分泌療法と脳転移,骨転移に対する放射線療法を施行したが,癌性髄膜炎の増悪による全身状態の急速な悪化をきたして再発後3カ月で死亡した.本症例はER陽性乳癌で術後10年での晩期再発であったが,癌性髄膜炎を伴い,放射線療法,内分泌療法に奏効せずに急速な転帰を辿った稀な症例と考えられた.

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© 2013 日本臨床外科学会
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