2013 年 74 巻 5 号 p. 1250-1254
症例は22歳,女性.自閉症で精神科通院中.平成22年6月中旬,腹痛にて当院の救急外来受診.腹部CTおよび上部消化管内視鏡にて毛髪塊を認めた.内視鏡的摘出を試みたが困難なため,後日,外科紹介予定とし,外来フォローとなった.その4日後,腹部膨満,発熱で救急外来を再診.腹部CTで小腸拡張の増悪を認め,イレウスの診断にて緊急開腹術となった.小腸内および胃内にある,合計800gの毛髪塊を摘出し,暗褐色で動きの悪い小腸は部分切除を行った.毛髪胃石と腸閉塞が同時に存在した症例は1984年~2012年までで自験例を含め22例が報告されている.全例が女性で,10代以下の若年者がほとんどであった.多量の毛髪胃石の自然排出は期待できず,内視鏡的に摘出が困難な場合は,早急に外科的摘出を考慮すべきと考えられた.また毛髪胃石の多くが精神的要因に起因し,海外では再発例もあり,精神科の継続的なフォローが必要である.