抄録
低水位期の氾濫原プールにおける稚魚多様性の予測子を探索するため,秋出水直後と春出水前における地形構造と種多様性との関係を調べた.現地調査は,2001年9月の台風出水で形成された10箇所の氾濫原プールにおいて,水位が安定した10月末から翌年7月末まで実施し,そのうち2001年10月末のデータを秋出水直後として,2002年3月末のデータを春出水直前に該当するものとして解析に用いた.調査地における魚類の種別個体数を体長群(全長30mm間隔)別に記録し,文献情報に基づく当歳魚のサイズに最も近い体長群までを本研究対象の稚魚として,その種数を目的変数として用いた.予測変数としてはプールの面積,水際線長,カバー水際線長,カバー水際線率,最大水深,平均水深,水深の変動係数,底質多様度,プールの長さ,プールの最大幅,形状指数,主流路からの距離および最近傍プールからの距離の13変数を設定した.主要な予測変数を抽出するための手法としてステップワイズ重回帰分析を用いた.重回帰分析に投入する予測変数については,相関係数と単回帰分析によるスクリーニングを行った.解析の結果,秋出水直後の氾濫原プールにおいては,稚魚多様度の予測子として最大水深と底質多様度の有用性が示された.最大水深は遊泳力の小さい稚魚の避難場機能の指標となることが推察された.底質多様性はハビタットの異質性を示していることが考えられた.また,春出水前においては,カバー水際線率の有用性が示唆された.解析対象プール数が少ないため (n =10),他の有用かもしれない変数を採択できていない可能性があるが,本研究の結果により,氾濫原プールの稚魚生育場機能の予測評価を行うためには,少なくとも最大水深,底質多様性,カバーに関するデータが重要であることが示唆された.