抄録
54歳,男性.食道癌と胃癌にて同時切除術を行ってから5年後に定期的上部消化管内視鏡検査(GS)により早期胃管癌が発見され,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した.切除標本の病理所見は,tub1~tub2,pSM1以深,LM0,VM1であった.高度肺気腫が存在したため,追加の胃管全摘術は行わず,無治療経過観察した.ESD後2年2カ月後に,GSにより胃管癌の局所再発が認められた(生検でpor).呼吸機能低下のために,S-1による化学療法を行った.GSでは胃管癌の進行は明らかではなかったが,呼吸機能の急速な悪化により,化学療法開始後約6カ月で永眠した.病理解剖により,胃管癌全体に表層性に広がる低分化腺癌の伸展,粘膜下・漿膜下のリンパ管侵襲,両肺の高度な癌性リンパ管症,胸膜転移,心筋,骨髄など,広範な他臓器への転移が判明した.胃管癌の治療を行う上で問題を提起する1例であると考えられる.