日本臨床外科学会雑誌
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症例
70年前の手術創に生じた小腸皮膚瘻の1例
石井 雅之佐々木 一晃大野 敬祐柴田 稔人河野 剛平田 公一
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2013 年 74 巻 6 号 p. 1543-1546

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抄録

消化管手術後の腸管皮膚瘻は手術後早期に発生することが多い.今回,手術から70年を経過して手術創に消化管皮膚瘻を発症した症例を経験したので報告する.症例は86歳,女性.70年前に急性虫垂炎とその後の腸閉塞に対し2回の開腹手術歴を有する.5カ月ほど前から下腹部正中創に皮膚炎を認め近医で治療されていたが,瘻孔が確認され以前の消化管手術との関係が疑われて当科紹介となった.瘻孔造影で小腸皮膚瘻と診断した.排液による皮膚症状が強くなり,瘻孔に対する根治治療のため手術を選択した.術前検査で炎症性腸疾患や悪性疾患の所見はなかった.瘻孔を中心に皮膚びらん部を含め,小腸と皮膚瘻関与組織を一塊として切除した.腹腔内に悪性所見や膿瘍の所見はなかった.病理組織学的検索では瘻孔部に炎症を認めたが,悪性所見や異物反応はなかった.70年前の手術創に癒着した腸管に生じた炎症により皮膚瘻を形成したと考えられるが原因は特定できなかった.

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