抄録
症例は78歳,男性.再発性肺癌に対する化学療法施行中に間質性肺炎を合併し,ステロイドパルス療法が開始された.治療中に突然頻回の下痢と腹部痛が出現した.腹部全体に激しい反跳痛と筋性防御を伴い,腹部CT検査で下部消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した.腹腔内所見からS状結腸穿孔と診断し,Hartmann手術を施行した.切除標本は,病理組織学的に偽膜性腸炎と,S状結腸憩室穿孔と診断された.術後直ちにメトロニダゾールによる治療を開始し,一時的に症状は改善したが,約1カ月後に死亡した.一般にC. difficile感染はC. difficile関連性下痢(CDAD)を契機に認識され,その原因の大部分が抗菌薬治療だが,ステロイドパルス療法のように免疫能が抑制される状況下では,抗菌薬の関与無しに腸内floraが乱される可能性があり,同様の治療が施行される際の合併症として注意すべき病態の一つであると考えられた.