2013 年 74 巻 7 号 p. 1827-1831
症例は64歳,男性.幽門側胃切除術後の胸部食道癌に対し,右開胸食道亜全摘術,後縦隔経路回結腸挙上,頸部食道挙上回腸端側吻合を施行した.術後呼吸不全が遷延し気管支内視鏡にて再建腸管と右主気管支との瘻孔が確認された.急速に増悪する呼吸不全に対し腸内容逆流防止目的で既往の胃空腸吻合部の離断術を施行したところ呼吸状態の著明な改善を得た.自然閉鎖を期待して保存的治療を行ったが軽快せず,再手術後176日目に右開胸・瘻孔閉鎖術を試みたが瘢痕化のため瘻孔部への到達は不可能であった.そこで48日後に胸壁前経路有茎空腸挙上頸部吻合術を施行し以後良好な経過を得た.食道癌術後の再建腸管気管支瘻は時に致死的となる合併症であるが,われわれは呼吸不全対策として消化管離断を緊急で施行し呼吸状態の改善を待って2期的再建を行い良好な経過を得た1例を経験したので報告する.