2013 年 74 巻 8 号 p. 2144-2148
魚骨の胃壁穿通による肝膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は72歳の男性で,高熱,倦怠感を主訴に紹介入院となった.腹部超音波・CT検査にて,肝外側区に3.5cm大の膿瘍と内部に高輝度針状陰影を認め,上部消化管内視鏡では胃角小弯に軽度の浮腫,ビラン様の所見を認めたため,異物,特に魚骨の胃穿通による肝膿瘍と診断した.抗生剤による保存的治療にて,肝膿瘍の改善を図った後,異物除去を目的に,腹腔鏡下に異物除去手術を施行した.異物は魚骨であった.術後は特に合併症もなく,良好に経過した.魚骨の胃壁穿通による肝膿瘍の報告はまれであり,その診断にはCT検査が有用で,また,腹腔鏡下手術は低侵襲で拡大視が可能であるため,本症例の異物除去には有効であった.