2014 年 75 巻 1 号 p. 212-218
症例は43歳,男性.2010年12月,右腎細胞癌・肺転移に対し右腎摘出術を施行,術後IFN投与にて経過観察中であった.2011年11月のfollow-up CTで胆嚢腫瘍を認め当科紹介.腹部USで胆嚢底部に26mm大の腫瘍を認め,腹部造影CTで造影効果の伴う20mm大の充実性腫瘍を認めた.MRIでは胆嚢内にT1WIで高信号,T2WIで低信号の腫瘍を認めた.以上より,腎細胞癌の胆嚢転移や胆嚢癌を疑い拡大胆嚢摘出術を施行した.摘出標本で胆嚢底部に30mm×15mmの有茎性腫瘤を認め,組織学的には淡明細胞型の腫瘍細胞で,免疫組織化学ではvimentinとEMAが陽性,CEAとCK-7が陰性で,腎細胞癌の胆嚢転移と診断した.腎細胞癌は,肺・肝・骨などへの転移が多いとされ,胆嚢転移は非常に稀である.今回われわれは,典型的な肉眼所見を呈した腎細胞癌胆嚢転移の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.