抄録
症例は82歳,男性.20年前より左鼠径部膨隆を自覚していた.食事摂取不良となってから3日後,嘔吐と腹痛を主訴に当院受診.左下腹部に圧痛と筋性防御を認め,左鼠径部から陰嚢にかけて発赤・圧痛・腫脹が著明であった.腹部CTで腹腔内の遊離ガス像と陰嚢内に糞便貯留とS状結腸の嵌入所見を認め,左鼠径ヘルニア嵌頓による陰嚢内S状結腸穿孔性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.左陰嚢に及ぶ左外鼠径ヘルニア嚢内でのS状結腸穿孔と,腹腔内への腸管内容物の流出による腹膜炎の所見であった.Hartmann手術およびヘルニア嚢切除を行い,術後29日目に退院した.鼠径ヘルニア嵌頓による器質的疾患のないS状結腸穿孔は極めて稀である.若干の文献的考察を加えて報告する.