日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸脛靱帯による遊離筋膜パッチと大胸筋充填を行った難治性食道瘻の1例
山本 洋太仁木 俊助古北 由仁丹黒 章
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2014 年 75 巻 2 号 p. 369-373

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抄録

症例は70歳台,男性.12年前食道癌で食道亜全摘,頸部食道胃管吻合術を施行された.7年前,吻合部近傍の頸部リンパ節再発に対して行われた化学放射線療法により,吻合部難治性瘢痕狭窄をきたした.8カ月前に再吻合術を行ったが,縫合不全から難治性食道皮膚瘻を形成した.全身状態から遊離空腸移植より大胸筋被覆充填術を選択した.瘻孔の縫合閉鎖は不可能であったため,左大腿から採取した腸脛靱帯を瘻孔に縫着し,有茎大胸筋弁で被覆充填した.術後は縫合不全や狭窄なく経過し,第38病日に他院転院した.難治性食道瘻に対する筋弁充填術においては,唾液漏出の阻止が充填組織の生着に重要である.瘻孔の直接縫合が不可能な場合は,皮島によるパッチ法があるが,手技が煩雑で植皮が必要となることも多い.腸脛靱帯を用いた遊離筋膜パッチは手技が容易であり,食道瘻閉鎖に非常に有用であった.

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© 2014 日本臨床外科学会
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